ウイルス性肝炎は重症化するまで症状に乏しい

アルコールやウイルス、薬物、寄生虫などが原因で肝臓に起こる炎症のことを「肝炎」といいます。肝炎を発症すると、発熱、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状が現れますが、日本人に多いB型肝炎とC型肝炎は重症化するまで、自覚症状が全く現れないこともあります。

放置すると肝がんに進行

感染経路は2種類あり、A型とE型肝炎は食べ物や水による「経口感染」で、B型とC型肝炎は血液からで、セックスによる感染も増えています。なかでも、男性の同性愛者によるアナルセックスでC型肝炎に感染するケースが増加しています。

ウイルスに汚染された水や食べ物を摂取することで感染するA型肝炎は、衛生環境が整っている日本国内でかかることは少なくなりました。感染者が減少したことは、A型肝炎に対して免疫を持っている人が減少していることも意味しています。したがって、衛生状態が劣悪な開発途上国を旅行する際には、渡航前にワクチン接種を受けておくと安心です。

A型肝炎は発症しても慢性化するケースは稀で、1~2週間もすれば自然に治癒します。しかし、患者の1%は劇症肝炎化し、その場合は約4割が死亡しますので注意は必要です。感染を予防するうえで大切なのは手洗いの励行と飲食物を十分に加熱することの2点に尽きます。

また、A型肝炎はウイルスが潜伏期間中でも便から排出されますが、肛門の周りに付着したウイルスが口に入って感染することがあります。そのため、肛門を舌で刺激するリミングを行う男性の同性愛者にA型肝炎が大流行したこともあります(1999年)。

E型肝炎は、感染者の便に含まれるウイルスに汚染された飲食物の摂取で感染します。豚・鹿・猪などの野生動物の生肉を十分に火を通さないで食べることでも感染します。毎年約2000万人が感染しているとされ、特に衛生状態の悪い東アジアと南アジアに集中しています。

そのため、日本人の感染者の多くは、これら開発途上国に旅行して帰国後に発症したものと考えられてきました。しかし、近年は渡航歴のない国内発症が増加しています。2015年6月から食品衛生法によって、生食用の豚肉の販売・艇庫湯が禁止されたのは、豚レバーによるE型肝炎の感染を危惧したものです。

C型肝炎はウイルスに感染しても、自覚症状が現れることはほとんどありません。稀に急性C型肝炎を発症しますが、約30%の人は一過性の感染で自然治癒します。残りの70%の人は持続感染者となり、症状が現れないまま慢性化します。この状態を放置していると数十年かけて肝硬変、そして肝臓がんへと進行します。

ウイルスに汚染された注射器などの医療機器や輸血で感染しますが、日本ではほとんど心配いりません。注意が必要なのは、ピアスやタトゥーを入れる際に使う器具や、ドラッグなどの注射針の使い回し、そして同性愛者同士によるセックスでの感染です。

日本国内におけるC型肝炎キャリアは最大で約200万人いるとされています。しかし、キャリアの人でも、医療機関で定期的に肝臓の検査を受けて、主治医の指導の下で健康管理を行っていれば、日常生活に制限がかかることはありません。しかし、「沈黙の臓器」とも呼ばれる肝臓は、重症化するまで肝炎ウイルスの感染に気が付かないことが多いので、肝炎ウイルスや肝臓がんの家族歴がある人、過去に輸血が必要な手術を受けたことがある人は、一度検査を受けてみるとよいでしょう。

C型肝炎は慢性化する率が高く、肝臓がんの原因の約8割を占めるに至っています。しかし、従来のインターフェロン治療よりも強力な薬が次々と開発されている現在では完治が期待できるようになりました。

肝炎ウイルスの有無を調べる

日本人に多い肝臓病は、B型とC型の肝炎ウイルスによるウイルス肝炎です。双方の肝炎ウイルス患者を合計すると、約350万人いると推定され、感染した本人が気づかずに生活を送っているケースも少なくありません。B型・C型肝炎ウイルスは保有者の血液中に存在しているので、肝炎ウイルスの感染の有無を把握するためには、ウイルス感染の目印となるウイルスマーカーを血液検査で調べる必要があります。

沈黙の臓器

人間の体には、体を外敵から守るための免疫機能が備わっており、肝炎ウイルスなどの異物が体内に入ると、それら異物を「抗原」と認識し、「抗体」を作ることで抗原に対抗しています。医療機関における感染対策が進んだ現在は、B型・C型肝炎の新規感染者は少なくなりましたが、肝臓の機能検査で異常が指摘された人、1992年以前に輸血を受けた人、血液製剤を使用したことがある人は、積極的に感染の有無を確認しましょう。検査は一度受ければ、感染機会がない限り、繰り返して検査を受ける必要はありません。

B型肝炎ウイルス(HBV)の感染を調べるウイルスマーカーは複数ありますが、最重要なのはHBs抗原となっており、陽性の場合はB型肝炎ウイルスに現在感染していることを示しています。陽性の場合は、医療機関で精密検査を受けることになります。HBe抗原やHBe抗体、B型肝炎ウイルスの遺伝子であるHBV-DNAを検査し、ウイルスの感染力の強さやウイルスの増殖状況などを調べます。

C型肝炎は、まずHCV抗体を調べることでウイルスの感染の有無がわかります。C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、体の免疫反応で、HCV抗体が作られるので、陽性であれば感染したことがわかります。陽性で数値が高い場合は、現在感染していることが疑われ、数値が低い場合は、過去に感染し、現在は体内にウイルスが存在しない可能性があります。HCV抗体が陽性の場合、感染が現在も持続しているかどうかは、C型肝炎ウイルスの遺伝子であるHCV-RNAを測定して判定します。

肝臓の病気を発見するためには、腹部超音波検査などの画像診断も大切です。腹部超音波検査では、肝臓の中に脂肪がどのくらいついているか、線維ができているかがわかりますし、肝臓の中の結節や腫瘍の有無、血管や胆管、肝臓の表面の状態をはじめ、胆石や腹水の有無などもわかります。特に肝がんの早期発見に有用です。

肝臓病の確定診断には、肝臓の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる肝生検が必要になることもあります。組織の採取は超音波画像を見ながら針を刺して行う場合と、腹腔鏡を使用する場合があります。

日本では、肝臓から発生するがんである「原発性肝がん」の約90%が、B型とC型の肝炎ウイルスに感染している人に発症しています。特にC型肝炎ウイルス感染者からの発生が多く、全体の70%を占めています。肝炎ウイルスに感染している人は肝がんのリスクが高いといえます。ウイルス性肝炎は治療法の進歩が著しく、治療成績も向上しています。早期に感染を発見し、治療を開始できれば、高い確率で肝がんの発生を抑えることができるようになっています。

肝臓の病気を調べる尿・血液の検査

肝臓の病気が疑われる場合、まず血液や尿の検査が行われますが、それによって、どんな病気がどの程度進行しているのかがわかります。

GOT・GPT(AST・ALT)
GOT、GPTはいずれも肝細胞に含まれる酵素で、健康な状態でも血液中に極少量が出ていますが、肝炎などで肝細胞が破壊されると、血液中に大量に出てくるため、肝障害の程度を把握するのに有用です。GOTは、肝臓のほかに、心臓にも含まれているので、心筋梗塞などでも数値は上昇します。肝機能を調べるには、特に肝臓に多く含まれている、GPTの数値も見る必要があります。

GOT、GPTは、採血時の肝臓の状態を示すので、その時の体調によって数値が異なります。通常、GOTの数値がGPTの数値よりも大きいのですが、病気の種類によって割合が替わるので、両方の数値を測定します。医師は以下に挙げる他の血液検査の結果を含めて総合的に検討し、肝臓の病気の有無、治療の必要性を判断するので、医師の指示に従うことが大切です。

γ-GTP
腎臓、膵臓、肝臓に中に含まれるγ-GTPは、肝臓に障害があったり、胆嚢、胆管の病気で、胆汁の分泌に異常をきたしてくると、血液検査の数値が上昇します。また、飲酒によるアルコール分に敏感に反応するため、アルコール性肝障害の診断に重宝しています。

ALP(アルカリフォスファターゼ)
全身の臓器や組織に含まれている酵素ですが、肝臓ではリン酸化合物を分解する働きをしています。特に、結石や胆管のがんで胆道に障害があると数値が上昇します。

尿ビリルビン
ビリルビンは、普通は、胆汁の中に排出されますが、肝細胞が障害されたり、胆汁の流れが停滞すると、血液中のビリルビンが増加して、尿の中に出てきます。

尿ウロビリノーゲン
胆汁中に排出されたビリルビンは、腸内細菌によって分解されてウロビリノーゲンになります。大部分は、便と一緒に排出されますが、一部は再吸収されて、肝臓に戻り、さらに肝臓を経て、尿中に排出されます。

肝細胞が障害されると、ウロビリノーゲンの代謝に支障をきたし、尿中に増加してしまいます。しかし、血液検査の精度が高まった近年はこれらの尿検査はそれほど重視されておらず、参考のために診る程度です。