劇症肝炎の約40%を占めるHBV(B型肝炎ウイルス)

一昔前、肝炎(肝臓に起きる炎症)と言えば、お酒を浴びるほど飲んでいる人が罹る病気とされてきましたが、今日では多くの肝炎の原因となるのは肝炎ウイルスの感染ということが判明しています。以下にお話しするB型肝炎は、HBV(B型肝炎ウイルス)の感染によって発症します。

HBVは、汚染された血液の輸血、血液製剤、注射器、そしてセックスを主な感染ルートとしています。症状としては、食欲不振、全身のだるさ、吐き気などが現れます。これが肝臓に炎症が起こった「急性肝炎」の状態です。

炎症が起こるということは、肝細胞に侵入したHBVを撃退しようと免疫機能が肝細胞もろとも破壊していることを示しています。したがって、多くの場合、HBVに感染しても完全に回復し、その際に抗体を獲得するのでその後生涯にわたって、HBVに感染することはありません。

しかし、一部の感染者は肝炎が完治しないで、HBVの持続感染が起こります。これが「慢性肝炎」と呼ばれる状態です。肝臓は再生機能が強い臓器なので、慢性肝炎で肝細胞が破壊されても、失われた細胞の分を新たに増殖させて肝臓の機能を保ちます。慢性肝炎になっても自覚症状に乏しいのは、このためです。

自覚症状はなくてもHBVの感染は持続しており、本人が知らないうちにセックスなどを介して他人にウイルスを感染させてしまうこともあります。日本国内には症状は出ないもののHBVに感染している「キャリア」がおよそ150万人いると推定されています。

ウイルスの検査体制が厳格な今日の日本では、輸血でHBVに感染するケースはまずありません。注射器、注射針の使い回しによる感染も、衛生管理が改善された現在では心配ありません。医療事故としては、1999年に加古川市(兵庫県)の病院で、透析治療を受けていた慢性腎不全の患者さんが院内感染でHBVに感染して、劇症肝炎を起こして5人が死亡するという一件がありました。

劇症肝炎を発症すると、半数は10日以内、4人に3人は3週間以内に死亡します。国内では劇症肝炎で毎年1000人が発病しています。肝炎ウイルスの中で劇症型になりやすいのはB型で、全体の40%を占めています。医療事故などによる感染を防ぐため、医師、看護師などの医療従事者はHBVのワクチン接種を行います。

今日の感染ルートとして注意が必要なのはセックスです。精液や膣液に含まれているHBVがセックスの際にパートナーの性器のわずかな傷口から血管内に侵入し、肝臓へ移動し増殖してしまいます。肝細胞に感染したHBVを撃退するため、免疫機能はHBVに乗っ取られた肝細胞を攻撃します。

こうして肝細胞は破壊されますが、肝臓には強い再生力が備わっているため、破壊と再生が繰り返されます。こうして肝炎は慢性化していきます。破壊された細胞から漏れ出すのが、肝臓の検査では必ず行われるGOT・GPT(AST・ALT)と呼ばれる酵素です。GOT・GPTの数値が高いのは、HBVを撃退しようと免疫機能が肝細胞を破壊していることを示しています。

B型肝炎ウイルスのキャリアであるかどうかを調べるには、血液検査で「HBs抗原」を調べます。検査結果が陽性ならば、現在、ウイルスを持っていることになります。さらに、進行の程度を把握するために、HBe抗原、HBe抗体を調べます。

HBe抗原が陽性で、なおかつGOT・GPTの数値が高い状態が、6か月以上続いている場合を「B型慢性肝炎」といいます。将来、肝硬変になる確率が高いので、早いうちに治療を開始する必要があります。

HBe抗体が陽性で、GOTが正常な場合は、ウイルスは保有しているけども量が少ないため、進行したり、セックスなどで他人を感染させることもありません。しかし、過去にHBe抗原が陽性の時期があったのですから、経過観察が必要となります。