HCV(C型肝炎ウイルス)の感染と症状

健康だけが数少ない取り柄(失礼!)の叔母が、微熱、全身の倦怠感、食欲不振に襲われました。最初は本人も風邪と思っていたんですが、1か月たっても体の不調は良くならず、そればかりか肝臓の具合もおかしいと自覚するようになりました。

インターフェロンとリバビリン

流石に普通の風邪じゃないと心配になった彼女は、近くの内科クリニックを受診して血液検査を受けたところ、肝臓の細胞の壊れ方を示すGOT・GPT(AST・ALT)の数値が異常値を示したそうです。そこで改めて採血をしてC型肝炎の抗体検査をしたところ、陽性だったのです。

抗体検査で陽性反応が出た場合、侵入したHCV(C型肝炎ウイルス)が体内に残っている、もしくは既にウイルスは退治されているかのどちらかですが、彼女はまだウイルスが体内に残っていました。病気やケガで輸血した経験もないし、不特定多数の男性とセックスすることもない(元々HCVはセックスでの感染リスクは低い)ので、彼女は検査結果を見ても自分がC型肝炎のウイルスに感染していることが信じられませんでした。

しかし、医師から色々と質問されているうちに、1970年代に長女を出産した際に、血液製剤のフィブリノゲンが使用されたこと、そしてこの血液製剤がHCVで汚染されていた可能性が高いということがわかりました。従来、アルコールのかじょゆ接種が肝硬変、肝がんの原因と思われてきましたが、現在ではB型とC型のウイルス肝炎が原因であることがわかっています。

HCVは血液中に存在するため、一昔前は輸血、血液製剤、注射器、入れ墨などでウイルスに感染するケースが多く見られました。感染対策が進んだ現在では考えられませんが、1950年代までは予防接種は同じ注射で打ち回しをしていたため、多くの感染者が出ていたのです。

C型肝炎の症状は、冒頭で少し触れたように発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚、白目の部分が黄色くなる)など比較的軽いものばかりです。HCVに感染しても大半は症状が現れない「無症候キャリア」で、長い年月をかけて慢性肝炎と進行します。HCVに感染してまだ発症していない、これらのキャリアは国内にはおよそ150万人いるとされています。

HCVに感染後、自覚症状がない潜伏期間が10年以上あり、40歳を越える頃に悪化しやすいとされています。さらに10年以上放置していると、肝硬変や肝がんを発症します。日本ではC型慢性肝炎の15人に1人は肝硬変にかかり、肝硬変患者の約半数が肝がんになっています。

C型肝炎は、自覚症状で病気を発見することは、非常に困難ですので、ほとんどは健診の血液検査で見つかります。検査では、まずHCV抗体検査が実施されます。血液中にHCV抗体があると、陽性反応を示します。

HCV抗体の陽性とは、体がC型肝炎に対して記憶を持っていることを意味していますが、これにはかつてC型肝炎ウイルスに感染したけど、今はウイルスはいない場合も含まれているので、この検査だけで、現在のウイルス感染の有無を確定することはできません。

そこで、C型肝炎ウイルスの有無を調べるために、「PCR法」や「HCVコア抗体検査」による検査が行われます。ただ、HCV抗体検査で陽性と判定された場合、血液検査で、GOT・GPTの数値が高いという異常が認められれば、C型肝炎ウイルスのキャリアであるということはほぼ診断できます。

肝炎では、がんとのかかわりにおいて、慢性肝炎が問題になるので、キャリアと診断されたら、肝炎を起こして否かを調べるために、定期的にGOT・GPTの数値を測定する必要があります。

肝硬変、肝がんへの進行を止めるためには慢性肝炎の段階でHCVを退治することが大切です。現在、慢性肝炎の治療で最初に選択されるのは、インターフェロン(IFN)です。インターフェロンの投与で体内のHCVが完全に駆除できる患者は約30%で、完全に駆除できないものの、症状に改善が見られる例も含めると全体の約60%の患者に効果があります。

また2015年には飲むだけでほぼ100%ウイルスを駆除できるハーボニー(ソフォスブビル・レディパスビル)という新薬が国内で承認されました。HIV(エイズウイルス)は現在、ウイルスを完全に駆除できる薬はないため、服薬は一生続ける必要はありますが、HCVは薬で完全に駆除できる時代になってきました。